「プライス」 劇団民藝公演
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作成日時 : 2008/06/28 20:57
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弟のビクター(西川明)は兄のウォルター(三浦威)と激しく言い争います。ここは、ニューヨークの老朽化したアパートの屋根裏部屋です。うずたかく積まれた年代物の家具は、亡くなった父親の遺産です。かつては資産家だった父は1929年の大恐慌で財産を失います。兄は家を出て、医師となり外科医として成功を収めます。しかし、弟は大学を中退して警官になり、父親を扶養します。50歳を目前にしたビクターは古い家具を全部処分しようとして古物商のソロモン(里居正美)を呼び、金額を決め、取引をしようとしました。そこへ、兄のウォルターが16年振りに姿を現します。最初はこの取引に口を出さないと言っていたのに、次第に兄は金額が安すぎると主張し、自分がこの家具を慈善団体に寄付すれば、自分の節税になるので、節税分の半分を弟に渡そうという提案をします。妻のエスター(河野しずか)もウォルターに同調するのですが、ビクターは次第に兄の勝手な主張を怪訝に思い始めます。
自分たちが貧しい生活をしていたのに、裕福な兄は弟の学資を貸そうともせず、仕送りも月に5ドルだけだったとビクターは詰ります。兄は、父は本当は財産を多少もっていたはずだと言い、弟と父の関係にひびを入れないように、金を出さなかったという弁解をします。妻のエスターは金に目がくらみそうになります。夫が金額交渉もせずに、家具を売却しようとしたり、兄からの有利な申し出を断ったりすることに憤慨します。ウォルターは裕福ですが、前の年に離婚をし、子供たちとも断絶状態です。想い出の詰まった古い家具に囲まれた室内で、積年の記憶や鬱憤が甦っては爆発します。翌週には解体される建物の中で年代物の家具に囲まれていると、過去が行き場を失って、途方に暮れているようです。
兄の勝手な言い分を拒否して、ビクターは家具の売買契約をソロモンと済ませます。そして、スーツに着替えてから妻と映画に出かけようとします。しかし、エスターは警官の制服のままでいいと優しく答えます。夫婦は現在を、そして現実を受け入れたようです。アーサー・ミラー原作の「プライス」は、アメリカ人にとって大恐慌がいかに大きなショックであったかを示してくれます。かつて資産家だった父は打ちのめされて、働く気力もなかったとビクターは亡き父を庇います。多分、アメリカ的な価値観では、父を扶養する道義的義務はないのだから、それは弟が自分で選択したことだと兄は言い捨てます。
4人の名優は素晴らしい熱演振りを披露してくれました。特に、89歳の老古物商ソロモン役の里居正美は、豊かな白い髭を蓄え、したたかで愛嬌のあるユダヤ人を演じています。買い取り金額をなかなか提示せず、ビクターをじらしたり、エスターの服を誉めたり、ウォルターを敬称で呼んだりする強かな老人を見事に見せてくれます。過去を買う商売をしながら、現在を冷徹に生きる人間の逞しさをソロモンは体現しています。
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